弊社ではパノラマVRに関して、2010年に取組みはじめました。
パノラマ雲台に一眼レフカメラ+魚眼レンズにて、360度回転させながら空間全周を撮影、撮影したカットをステッチツールで合成することで全天球のパノラマ画像を作成するところからでした。
当時は情報も少なく、国内でも数人のカメラマンが撮影方法や合成を試行錯誤していた時代です。弊社もIVRPA(https://ivrpa.org/)に参加し、フランスKolor社の「PANOBOOK」を見てはデジタル時代のパノラマの活用を考えて来ました。



※左の写真は、日本でパノラマVRがコンテンツとして初めて世の中に出たものと思います。
 森高千里「渡良瀬橋」のCD-ROM(制作・著作・発売元 株式会社オラシオン)。
 1993年、AppleのQTVRの時代のコンテンツです。

パノラマVR(バーチャルリアリティ)の歴史は、パノラマ画像技術とバーチャルリアリティ技術の進化を通じて形作られています。
以下に、パノラマVRの発展における重要なステップを年代順にまとめてみました。

1. パノラマ画像の起源(18世紀~19世紀)

  • 1787年 - パノラマの概念誕生:
    • スコットランドの画家ロバート・バーカー(Robert Barker)は、エディンバラ市内の風景を360度のパノラマで描き、「パノラマ」という言葉を生み出しました。彼の作品は円形の建物の内壁に描かれ、観客は中央に立って風景を一望できる形式でした。
  • 19世紀 - パノラマの商業利用:
    • 19世紀に入ると、パノラマ画はヨーロッパ全土で人気となり、娯楽施設として展示されることが一般化しました。これらの「円環画」や「ジオラマ」展示は、現代のVRの初期形態といえます。

2. 写真技術とパノラマの結合(19世紀後半~20世紀初頭)

  • 1850年代 - パノラマ写真:
    • 写真技術の進化に伴い、カメラを使ってパノラマ画像を撮影する技術が開発されました。複数の写真をつなぎ合わせて広範囲の風景を表現する方法が使われ、パノラマ写真が徐々に普及しました。
  • 1900年 - Cirkutカメラの登場:
    • アメリカのカメラ会社がCirkutカメラを開発しました。このカメラは回転しながら連続撮影を行い、フィルムに360度の画像を記録するもので、特に大規模なグループ写真や都市景観の撮影に使用されました。

3. バーチャルリアリティの始まり(1960年代~1980年代)

  • 1960年代 - 初期のVR技術:
    • モートン・ハイリッグ(Morton Heilig)は「Sensorama」と呼ばれる初期のVRシステムを開発しました。これは、視覚、聴覚、触覚をシミュレートする装置で、視覚体験には立体的な画像が使用されました。
  • 1968年 - 最初のヘッドマウントディスプレイ(HMD):
    • アイバン・サザランド(Ivan Sutherland)は「ダモクレスの剣(The Sword of Damocles)」という名の、コンピュータ生成画像を表示するHMDを発表しました。このデバイスは、バーチャルリアリティの前身として評価されています。

4. デジタルパノラマとVRの進化(1990年代~2000年代)

  • 1990年代 - QuickTime VRの登場:
    • Apple社は1994年にQuickTime VRをリリースしました。これは、デジタルパノラマ画像やオブジェクトをバーチャル空間で表示し、ユーザーが画像を操作できる技術であり、インターネットを通じてバーチャルツアーが可能になりました。
  • 1990年代後半 - バーチャルツアーの普及:
    • 高解像度のデジタルカメラとパノラマソフトウェアが普及し、観光地や不動産物件のバーチャルツアーが一般化しました。これにより、インターネットを通じて誰でもパノラマ画像を体験できるようになりました。

5. 現代のパノラマVR(2010年代~現在)

  • 2010年代 - 360度カメラの普及:
    • 2010年代には、Insta360やRicoh Thetaなどのコンシューマ向け360度カメラが登場し、一般の消費者が簡単に360度パノラマ写真やビデオを撮影できるようになりました。この技術はソーシャルメディアやVRプラットフォームでの共有を可能にしました。
  • 2018年- ヘッドセットの進化:
    • Oculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRなどの先進的なVRヘッドセットが登場し、パノラマ画像やビデオを没入型の体験として楽しむことができるようになりました。
  • 2018年-VR元年 モバイルVRの普及:
    • Google CardboardやSamsung Gear VRなど、スマートフォンを活用した簡易VRヘッドセットが登場し、多くの人々が低コストでVR体験を楽しめるようになりました。
  • 2023年- Apple Vision Pro発表:
    • 仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を融合させたヘッドセット「Vision Pro」(ビジョン・プロ)を発表した。周囲の状況を認識しながら、目の前に表示されるデジタルインターフェースの操作ができる製品が登場しました。

6. 未来の展望

  • AR/VRの融合:
    • 今後、パノラマVRは拡張現実(AR)やミックスドリアリティ(MR)と融合し、よりインタラクティブで現実感のある体験が可能になると予想されます。5Gネットワークとクラウドコンピューティングの進化により、よりリアルタイムで高品質なパノラマVRコンテンツが提供されるようになるでしょう。